2020.05.20

歯科・クリニック向け「雇用調整助成金」の最新情報まとめ

『雇用調整助成金』とは?

『雇用調整助成金』とは、会社の業績や経済上の理由によって事業の縮小を余儀なくされた事業主が、スタッフを解雇せず雇用が維持できるよう、国が休業手当・賃金などの一部を助成する制度です。

休業等を行う事業主に対して支払われるものであり、労働者(スタッフ)個人に支給されるものではありません。
また雇用の維持を目的とするため、社長や役員、自営業の家族従事者など雇用者ではない方は対象外になります。

受給するためには、以下の2点が求められます。
・生産指標(売上など)が下がっていること
・休業中のスタッフに休業手当(平均賃金の60%以上)を支給していること

今回、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、厚生労働省から特例措置が発表されたため、まとめた情報をご紹介します。

なお、当記事は助成金の給付を保証するものではありませんので、あらかじめご了承ください。詳細や最新情報についてはこちらの厚生労働省ホームページをご確認ください。
▶︎雇用調整助成金(厚生労働省ホームページ)

新型コロナウイルスに伴う特例措置

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置として、4月1日から6月30日までが緊急対応期間と位置付けられ、この期間中については、以下が実施されることになりました。

緊急対応期間(令和2年4月1日〜同年6月30日)中の上乗せ特例

対象事業者の拡大
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける全業種の事業主が対象になりました。

生産指標の要件緩和
生産指標(売上)が前年同期比10%以上ダウンが必要でしたが、緊急対応期間内は5%ダウンになりました。
※但し、1月24日〜3月31日は10%ダウン

雇用保険被保険者でない労働者も対象に
雇用保険加入6ヶ月未満の新卒採用者や、雇用保険未加入のパートやアルバイト(週20時間未満の労働者)も助成金の対象になります。
但し、計算方法が異なり、『雇用調整助成金』ではなく『緊急雇用安定助成金』という名前で申請することになります。また、教育訓練は緊急雇用安定助成金の対象ではありません。

助成率の引き上げ
助成率が中小企業:2/3から4/5、大企業:1/2から2/3に引き上げられました。※1
解雇等をしていない場合は助成率を上乗せ(中小企業:4/5から9/10へ、大企業:2/3から3/4へ)。

支給限度日数(100日/1年)に関わらず活用
4月1日〜6月30日の休業は、年間の上限である100日に加算してカウントが可能になりました。

教育訓練加算額の引き上げ及び対象範囲の拡大
在宅でインターネット等を用いた研修参加も含め、教育訓練が必要な被保険者に対する教育訓練に対して、
中小企業:2,400円/人・日、大企業:1,800円/人・日が加算。
※対象となる教育訓練となるか不明な場合、実施前に管轄の労働局等にお問い合わせください。
▶︎雇用調整助成金のお問い合わせ先一覧

運用面の特例

計画届の事後提出が可能
1月24日〜6月30日まで、計画届(2回目以降を含む)の事後提出が可能になりました。

クーリング期間の撤廃
通常、1つの対象期間が満了後、引き続き本助成金を受給する場合、その満了日の翌日から1年間以上期間を空けなければ、新規で対象期間を設定することができませんでしたが、1/24以降の休業(緊急対応期間中の休業も含む)については、これが不要になりました。

対象となる短時間休業の拡大
一斉に実施する必要があった短時間休業の要件が撤廃され、部門や店舗など施設ごとの休業も対象になりました。

休業規模の要件の緩和
休業等の延べ日数が所定労働日数の1/20(中小企業)、1/15(大企業)以上であったことが、1/40(中小企業)、1/30(大企業)以上に緩和されました。

残業相殺制度の停止
稼働日に残業が含まれていても、助成金の減額はありません。

通常時と特例措置の比較

通常時と今回の特例措置の違いについては、以下の比較表をご覧ください。

特例措置の比較表

▲特例措置の比較表

事業主負担の軽減

申請にあたり、事業主の申請手続きの負担軽減と支給事務の迅速が、以下のように図られることになりました。
申請に必要な書類や申請方法については後述します。

・記載事項が約5割削減(73事項→38事項に削減)
・記載事項の大幅な簡略化(日毎の休業等の実績は記載不要で合計日数のみで可能に)
・添付資料の削減
・添付書類は既存書類で可能に
・計画届は事後提出が可能に(〜6月30日まで)

特例措置の詳しい内容

特例措置の詳しい内容については、以下の厚生労働省のホームページを参考にしてください。

▶︎新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を拡充します
▶︎雇用調整助成金の申請書類を簡素化します
▶︎雇用調整助成金の特例拡充のお知らせ(生産指標の比較月関係)

※1 中小企業とは以下に該当する企業で、大企業とはこの中小企業に該当しないものをいいます。
小売業(飲食店を含む):資本金5,000万円以下又は従業員 50人以下
サービス業:資本金5,000万円以下又は従業員100人以下
卸売業:資本金 1億円以下又は従業員100人以下
その他の業種:資本金 3億円以下又は従業員300人以下

受給手続きの流れ

支給までの流れ

受給の手続きは、おおむね以下の図のような流れです。

特例として、計画届(2回目以降のものを含む)の提出は休業の実施後(事後提出)でも可能です。
また、計画届は2回目以降の提出は不要です。

受給手続きの流れ

▲受給手続きの流れ

流れの中で特にポイントになるステップは、以下です。

休業・研修シフトの計画

自社にとって最適な休業シフトを組むことが最も重要なポイントです。

以下の例を参考にシフトを組んでいただいても結構です。
・全社営業停止とし、全スタッフ一定期間休業
・縮小営業とし、全スタッフローテーションで休業(ABCのグループに分けるなど)
・縮小営業とし、一定のスタッフ(新入社員、アルバイト、パート、○○職種のスタッフなど)は一定期間休業
・曜日限定で営業・営業停止
・連休中日を休業日とする など

前述のシフトを組んだら、休んでいる間に何%の休業手当を支給するのか、以下のいずれかを守った上で決めてください。

●労働基準法で定められた平均賃金以上
 直近3ヶ月間に支払った賃金総額 ÷ 3ヶ月総暦日数 × 60% = 平均賃金

●その他
 例)基本給のみ全額支給、所定給与を全額(もしくは9割、8割、7割、6割に設定)支給
 ※但し、労働基準法で定められた平均賃金以上であることが必要

計画届や支給申請に必要な書類や提出方法については、後述をご覧ください。

申請に必要な書類と提出方法

申請に必要な書類

通常の場合、1ヶ月ごとに行う必要がありますが、緊急対応期間(4月1日~6月30日)中は、複数月をまとめて申請が可能になりました。

申請には「計画届」と「支給申請」が必要で、それぞれに必要な書類が以下になります。
※雇用保険被保険者以外は『緊急雇用安定助成金』にあたるため、書類が異なります。

「計画届」の提出に必要な書類

▲「計画届」の提出に必要な書類

「支給申請」の提出に必要な書類

▲「支給申請」の提出に必要な書類

今回の特例措置を利用し申請される方は、こちらから申請様式をダウンロードください。
▼雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)
【小規模事業主用】(従業員が概ね20人以下の会社や個人事業主の方)
【小規模事業主以外用】

各申請書の書き方については、以下のガイドブックや各マニュアル、厚生労働省の動画を参考にしてください。
▶︎雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)
▶︎雇用調整助成金支給申請マニュアル(休業)
▶︎雇用調整助成金支給申請マニュアル(訓練)
▶︎緊急雇用安定助成金支給申請マニュアル

但し、確実に助成金を受けるためにも、書類作成後はハローワーク、または労働局に必ず事前確認してください。

提出方法(窓口・郵送)

申請書類の作成と準備ができたら、「各都道府県労働局助成金センター」に来所、または必要書類を郵送にて提出してください。
なお、簡易書留や特定記録などの申請の記録が残る方法で送付してください。
また、申請期限までに届いていなければならないため、ご注意ください。
申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。

申請書の記入漏れや書類の不備がある場合は、その旨が記載された手紙とともに、申請書類一式が返送されます。
その不備を修正した上で、再度郵送する必要がありますので、記入漏れや添付漏れがないか、確認が必要です。

問い合わせ先や窓口については、以下の厚生労働省のホームページをご確認ください。
▶︎雇用調整助成金のお問い合わせ先一覧
▶︎雇用関係各種給付金申請等受付窓口一覧

提出方法(オンライン)

令和2年5月20日より、オンラインでの申請が可能になりました。以下の4ステップで完了します。

1.雇用調整助成金等オンライン受付システムにアクセス
▼雇用調整助成金オンライン受付システム
https://kochokin.hellowork.mhlw.go.jp/prweb/shinsei/

2.ログイン用のメールアドレスを登録

3.SMS認証用の携帯電話番号を登録

4.マイページから申請書類をアップロード

詳しくは、以下で公開されている厚生労働省の情報をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000631540.pdf

実際にいくら助成してもらえる?

助成率は、中小企業が4/5で、大企業が2/3。
スタッフを解雇しない場合、中小企業は9/10、大企業は3/4に引き上げられます。

但し、1人1日当たり8,330円と上限が定められていますので気をつけてください。

緊急対応期間中の受給額例

では、実際にいくら受給できるのか、受給例を挙げます。

例)前年度の平均給与額※2が15,000円(日給)で、休業手当がその60%である9,000円
  スタッフ10人を10日間休業させた場合(解雇者なし)

  9,000円(休業手当) × 90%(助成率) = 8,100円(1人当たり1日分の助成金額)

  8,100円(1人当たり1日分の助成金額) × 10人 × 10日間 = 810,000円(支給額)

※前年度の給与額から算出するため、実際に支払った休業手当の90%が助成されるわけではありません。差額は会社負担となります。

雇用保険未加入者も対象とする場合の受給額例

雇用保険未加入者も対象とする場合、前年の平均給与(日給)ではなく、実際に支払った休業手当の額で算出されます。

例)10日間休業させたスタッフ10人に対し、支払った休業手当が合計600,000円の場合(解雇者なし)

  600,000円(支払った休業手当) ÷ 10人 ÷ 10日間 = 6,000円(支払った一人当たりの休業手当平均額)

  6,000円(支払った一人当たりの休業手当平均額) × 90%(助成率)= 5,400円(1人当たり1日分の助成金額)

  5,400円(1人当たり1日分の助成金額) × 10人 × 10日間 = 540,000円(支給額)

教育訓練加算した場合の受給額例

例)前年度の平均給与額が15,000円(日給)で、スタッフ10人を10日間教育訓練した場合(解雇者なし)
  ※教育訓練の場合、原則休業手当ではなく通常賃金として支払われるため支給割合は100%

  15,000円(日給) × 90%(助成率) = 13,500円

  但し、このうち上限が8,330円と定められているため、 13,500円 > 8,330円 となり
  8,330円(上限) + 2,400円(教育訓練加算)※310,730円(1人当たり1日分の助成金額)

  10,730円(1人当たり1日分の助成金額) × 10人 × 10日間 = 1,073,000円(支給額)

※2 前年度に支払った雇用保険加入者の給与総額から一人当たりの平均給与額を算出

※3 中小企業の場合。大企業は1,800円/人・日

更なる拡充について

令和2年5月1日に、特例措置について更なる拡充が発表されました。
こちらは解雇等を行わずに雇用を維持する中小企業に限りますが、それについてご紹介します。

拡充1:休業手当の支払率60%を超える部分の助成率が特例的に10/10に

中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合、事業主が支払った休業手当のうち60%を超える部分の助成率が10/10になります。
※教育訓練を行なった場合も同様です。

拡充1の支給額例

例)前年度の平均給与額が8,000円(日給)で、休業手当100%である8,000円
  スタッフ5人を10日間休業させた場合

  8,000円(休業手当) × 90%(助成率) × 60% = 4,320円(支払率60%の部分)
  8,000円(休業手当) × 100%(助成率) × 40% = 3,200円(支払率60%を超える部分)
  4,320円 + 3,200円 = 7,520円(1人当たり1日分の助成金額)

  7,520円(1人当たり1日分の助成金額) × 5人 × 10日間 = 376,000円(支給額)

拡充2:休業手当全体の助成率が特例的に100%に

1のうち以下の一定の要件を満たす場合、事業主が支払った休業手当などのうち、100%を国が特例的に助成してくれます。(事業主の負担は0円)

●中小企業であること
●新型インフルエンザなど対策特別措置法等に基づき、都道府県対策本部長が行う要請によって、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であり、これに協力して休業などを行っていること
●以下のいずれかに概要する手当を支払っていること
1 労働者の休業に対し、100%の休業手当を支払っている
2 上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っている(支払率60%以上である場合に限る)
※教育訓練を行なった場合も同様

適用日

なお、この拡充は4月8日以降の休業などから遡って、緊急対応期間中に限り適用されます。
※対象労働者1人1日当たり8,330円が上限

更なる拡充について、以下の厚生労働省のイメージ図も参考にしてください。

更なる拡充について(厚生労働省HPより)

▲更なる拡充について(厚生労働省HPより)

詳しい最新情報はこちらをご覧ください。
▼雇用調整助成金の特例措置を実施します(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11128.html

注意点

全国社会保険労務士連合会の動画にある注意点を以下にまとめました。申請前にご確認ください。

よくある質問

Q:会社は「臨時(コロナ)休業」しているが、内勤業務のためスタッフを出勤させている場合は、対象になる?
A:休業していてもスタッフを休ませていないため、休業には該当せず対象外です。

Q:会社は「縮小ながらも(平常)営業」しているため、一部のスタッフを休ませている場合は、対象になる?
A:休ませているスタッフが助成金対象休業になります。

Q:会社は全社休業としていて、スタッフがテレワークしている場合は、対象になる?
A:テレワークは「勤務」に該当するため、休業には該当せず対象外です。

Q:新型コロナウイルスの影響をどのように証明すればいいですか?
A:コロナ特例を使う場合でも証明する必要はなく、申し立てで足ります。

Q:一部のスタッフを解雇しましたが、助成金は出ますか?
A:この場合でも支給されます。但し、解雇予告した日以降、その人は対象外です。

その他

また以下の注意点を踏まえ、不明な点がある場合は、申請前に管轄の都道府県労働局またはハローワークに必ずご相談ください。

不正受給
不正受給が判明した場合、事業主名の公表など厳しい対応が行われます。

供給調整
本助成金は、同一の賃金などの支出について、他の助成金を受給している場合は対象外になります。
他の助成金を受給している場合や、受けようと検討している場合は、管轄の都道府県労働局またはハローワークにご相談ください。

まとめ

冒頭でもご案内しましたが、当記事は助成金の給付を保証するものではありません。申請の際は、ご自身でも事前に、必ずご確認ください。

雇用調整助成金に関するお問い合わせ・相談窓口

雇用調整助成金に関する具体的な申請手続、申請先についてお問い合わせ先は以下のお問い合わせ先一覧をご覧ください。ハローワークや各都道府県労働局の情報が記載されております。

▶︎雇用調整助成金のお問い合わせ先一覧

記事内の引用元まとめ

▶︎雇用調整助成金
▶︎雇用調整助成金の特例措置を実施します
▶︎雇用調整助成金 FAQ
▶︎【動画解説】新型コロナウイルス感染症関連助成金・支援金
▶︎雇用調整助成金の支給申請のポイント(前編)
▶︎雇用調整助成金の支給申請のポイント(後編)
▶︎新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を拡充します
▶︎雇用調整助成金の申請書類を簡素化します
▶︎雇用調整助成金の特例拡充のお知らせ(生産指標の比較月関係)
▶︎雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)
▶︎雇用調整助成金支給申請マニュアル(休業)
▶︎雇用調整助成金支給申請マニュアル(訓練)
▶︎緊急雇用安定助成金支給申請マニュアル
▶︎雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)
▶︎雇用調整助成金支給要領
▶︎緊急雇用安定助成金支給要領

最後に

今後、情報の更新があった場合は、随時このページをアップデートしていきます。
よろしくお願いいたします。
(最終更新日:2020年5月20日)

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