【医療機関向け】オンライン資格確認の導入と補助金について徹底解説

補助金/助成金/給付金

最終更新日:2024/04/26

公開日:2023/02/09

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2023年4月以降、オンライン資格確認の原則義務化が決定しました。この決定にともない、多くの医療機関がオンライン資格確認の導入を検討していることでしょう。

この記事では、病院・クリニック・歯科医院などの医療機関や薬局に向けて、オンライン資格確認の導入と補助金について徹底解説します。概要や導入のメリット、申請の流れ、補助金の対象、よくある質問などをご紹介するため、医療機関の院長先生や医師、また担当者の方は必見です。

オンライン資格確認とは

オンライン資格確認とは、患者さんが加入している医療保険を確認する「資格確認」を、オンライン上で行うことです。

従来の患者さんの資格確認は、患者さんの健康保険証に記されてある記号、番号、氏名、生年月日、住所などを、医療機関のシステムに入力して確認していました。しかしこの方法では、「入力の手間がかかる」、「時間がかかりすぎて患者さんを待たせてしまう」などのデメリットがあります。また、資格を失効した保険証を患者さんが提出した場合、「支払いが行われない」、「他の被保険者が元被保険者の立場にある患者さんの医療費を負担する必要が生じる」などの問題がありました。

こうした背景をもとに、2021年10月から本格的にスタートしたのが「オンライン資格確認」です。患者さんのマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などにより、オンラインで患者さんの情報が集約、管理されます。たとえば、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会とオンラインで常時接続されることが可能です。これにより、患者さん本人の同意を得た上で、医療機関側が薬剤情報や特定検診などの情報を閲覧できます。

医療機関はオンライン資格確認の導入によって、患者さんの保険情報の確認だけでなく、質の高い医療を提供するための情報も得ることができるのです。

2023年4月から原則義務化

厚生労働省は、第527回中央社会保険医療協議会において、医療機関または薬局でのオンライン資格確認を、2023年4月から原則義務化することを決定しました。

厚生労働省は、オンライン資格確認の義務化にともない、これらを利用する場合の診療報酬や、導入にかかる費用の補助金を見直すことも決定しました。こうした対策により、オンライン資格確認のさらなる普及拡大が期待されるでしょう。

診療報酬加算の見直し

オンライン資格確認の原則義務化にともない、以下の評価の廃止と新設が行われます。

  • 「電子的保健医療情報活用加算」の廃止
  • 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の新設

評価の廃止と新設の取り組みは、2022年10月から開始されています。マイナ保険証を利用する場合は、診療時における患者さんの服薬情報などの確認作業が効率化されるため、患者さんの負担が小さくなる仕組みです。

2022年10月からの「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の取り組みは、以下の通りです。

病院・クリニック
  • マイナ保険証を利用する場合:2点(初診時)
  • マイナ保険証を利用しない場合:4点(初診時)
保険薬局
  • マイナ保険証を利用する場合:1点(6月に1回)
  • マイナ保険証を利用しない場合:3点(6月に1回)

オンライン資格確認の現状

オンライン資格確認の現状について、以下の2つの分野を見てみましょう。

  • オンライン資格確認の導入状況
  • オンライン資格確認の利用状況

オンライン資格確認の導入状況

厚生労働省は2022年9月時点で、およそ5割の医療機関や薬局でオンライン資格確認の導入を目指しています。最終的に2023年5月末の時点で、すべての施設への導入を目標にしています。
しかし、オンライン資格確認の導入状況は、2022年11月27日の時点で、顔認証付きカードリーダー申し込み数が全体の88.0%、つまり230,025施設中202,531施設という状況です。この数字は、義務化対象施設に対する割合の95.0%にあたります。また、準備完了施設数は、全体の42.6%にあたる97,996施設に留まっています。

オンライン資格確認の利用状況

厚生労働省の調査によると、実際にオンライン資格確認の利用を開始している施設は、230,025施設中83,579施設に留まっています。この数字は、全体の36.3%の状況にあたります。義務化対処施設に対する割合では、39.2%とかなり低い割合です。

出典:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)|厚生労働省

オンライン資格確認導入のメリット・デメリット

オンライン資格確認の導入については、導入時のメリットとデメリットを事前に知っておくことは重要です。

オンライン資格確認導入のメリットには以下の主な3つが挙げられます。

  • 保険証入力の手間削減
  • レセプト返戻の作業削減
  • 薬剤情報や特定健診情報の入手による安心な医療の提供

従来の受付業務は、患者さんから健康保険証を受け取り、保険証記号番号や氏名、生年月日、住所などの情報をシステムに入力する必要がありました。しかし、オンライン資格確認を導入することで、マイナンバーカードによる患者さんの最新の保険資格を自動的に取り込むことが可能です。

またオンライン資格確認を導入することで、患者さんの保険資格をリアルタイムで確認できます。その結果、資格過誤によるレセプト返戻が減少し、受付業務の負担が削減されるでしょう。

また患者さんの同意のもと、医師が患者さんの薬剤情報や特定健診情報などを確認できるようになります。医師は、患者さんの過去の情報を見て服薬指導を行えるほか、薬剤重複投薬などの問題を避けることが可能です。オンライン資格確認の導入により、一層適切で信頼性の高い医療が提供できます。

オンライン資格確認にはさまざまなメリットがある一方、デメリットや課題があることも事実です。オンライン資格確認導入のデメリットには以下の3つがあげられます。

  • 機器に慣れない患者さんへのサポートが必要
  • 一定の費用負担が必要
  • システム導入までの手間が必要

医療機関を利用する患者さんの多くは高齢者が多く、カードリーダーや顔認証システムに慣れていない患者さんが大半です。この場合、システムに不慣れな患者さんへのサポートが必要になる可能性があります。また、患者さんが自分のマイナンバーカードを紛失してしまった場合もサポートが必要になるでしょう。

オンライン資格確認導入には、一定のランニングコストがかかります。通信料やシステムのセキュリティ対策のための費用、端末が故障した場合の修理費用などです。初期費用は、政府からの補助金を利用することが可能ですが、2021年3月までに申請を行った場合を除き、一部負担金が求められます。

オンライン資格確認を導入するには、電子カルテやレセコンの改修、またオンライン請求のための回線環境が必要です。システムの導入に関しても課題が多く、スタッフに対する研修も行う必要があるため手間がかかります。

オンライン資格確認の導入と補助金申請の流れ

オンライン資格確認の導入と補助金申請の流れは、以下のいくつかのステップに分けられます。

  • 顔認証付きカードリーダーの申し込み
  • システムベンダへ発注
  • 導入作業
  • 運用準備・運用開始
  • 補助金申請

まず、顔認証付きカードリーダーの選定を行い、システムベンダへ発注します。選定はポータルサイトから行います。
次にベンダに見積りを依頼し、ネットワーク回線、院内の連携機器などの確認です。その後、ポータルサイトの利用申請を行いますが、ポータルサイトでは「顔認証付きカードリーダーの申し込み」、「オンライン資格確認の利用申請」、「医療情報化支援基金の補助申請の受付け」が可能です。
機器を受け取った後、設定を行い、運用テストをします。受付業務のフロー確認や院内掲示の準備も必要です。

実際にオンライン資格確認の運用を開始した後、補助金の申請を行います。書類を用意するなど、補助金を申請する準備をしましょう。準備には以下の事柄が含まれます。

  • オンライン資格確認等事業の設備導入を完了させる
  • これまでかかった費用をシステム会社などに支払う
  • 申請のために必要な書類を添付し、補助金を申請する

補助金の申請は、「ポータルサイトから申請する方法」と「郵送で申請する方法」があります。

ポータルサイトから行う場合、「医療機関等向けポータルサイト オンライン資格確認関係補助金申請」からログインして、求められる必要情報を入力して申請します。

郵送で申請する場合は、上記の必要書類に加え「オンライン資格確認等関係補助金交付申請」が必要です。ポータルサイトからの申請に比べて書類が一つ増えるため、注意しましょう。

オンライン資格確認の補助金申請に必要な書類

実際にオンライン資格確認の運用を開始後、補助金の申請を行います。補助金申請のために必要な書類は、以下の通りです。

  • 領収書の写し
  • 領収書内訳書の写し
  • オンライン資格確認等事業完了報告書

領収書や領収書内訳書は、システム会社から受け取ることが可能です。領収書内訳書は、詳細な内訳の記載が必要です。「○○一式」などの大まかな記載では受理されないため注意しましょう。また、税込みでの金額を記載します。

2022年6月7日から12月31日までに、顔認証付きカードリーダーを申請し、2023年2月28日までにシステム事業者と契約を結んだ場合は、契約書の写し、または発注書等の写しの提出も必要です。2023年2月28日までに補助金を申請する場合は、契約書の写しなどの添付を省略できます。

参考:領収書内訳書の対象となる項目|医療機関等向けポータルサイト

医療機関(病院・クリニック・歯科医院)、薬局への補助と対象

オンライン資格確認導入にともなう顔認証付きカードリーダーは、医療機関および薬局に対して無償提供されます。病院への無償提供は3台までで、クリニックなどへは1台とされています。さらに必要な改修などにかかる費用については、補助金の申請が可能です。

医療機関、薬局への補助の対象となる事業は、以下の通りです。

  • オンライン資格確認の導入に必要となる資格確認端末の購入および導入
  • レセプトコンピューター、電子カルテシステムなどのアプリケーションに組み込むパッケージソフト購入および導入
  • オンライン資格確認に必要となるオンライン請求回線の導入、または既存のオンライン請求回線の増強
  • オンライン資格確認導入に必要なレセプトコンピューター、電子カルテシステムなどの既存システムの改修

2023年6月までの交付申請が必要とされているため、オンライン資格確認導入を検討している医療機関または薬局は早めの申請をおすすめします。

オンライン資格確認と補助金に関するQ&A

オンライン資格確認と補助金に関して、いくつかの疑問や不安があることでしょう。オンライン資格確認に関して、よく耳にする疑問や不安についてまとめました。医療機関の院長先生の皆様は、ぜひ参考にしてください。

オンライン資格確認に関するQ&A

Q1. オンライン資格確認を導入したら、患者さんはマイナンバーカードがないと受診できませんか。
A1. 受診は、健康保険証でも可能です。しかし、薬剤情報等を踏まえた診療を受けたい患者さんは、マイナンバーカードが必要です。

Q2. 医療機関や薬局内のレセプトコンピューターなどの情報を、「社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会」が閲覧できるようになるということでしょうか。
A2. オンライン資格確認は、「社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会」が、資格情報などの情報を提供する仕組みです。「社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会」が、医療機関や薬局の診療情報を閲覧したり、取得したりはできません。

Q3. 患者さんがマイナンバーカードを忘れたら、どのように対処したらよいでしょうか。
A3. 患者さんが健康保険証を忘れた場合と同じ対応になります。もし、患者さんがマイナンバーカードを忘れて健康保険証を持参していれば、健康保険証によるオンライン資格確認を実施します。

Q4. オンライン資格確認のためのシステム改修に関して、補助金申請を行う時期はいつ頃ですか。
A4. システム改修後、オンライン資格確認の導入準備が完了した後に、社会保険診療報酬支払基金に補助金申請を行います。医療機関や薬局における導入作業後である2月以降です。

Q5. レセプトのオンライン請求を利用していませんが、オンライン資格確認を始めることは可能ですか。
A5. オンライン請求回線の環境を導入することで、オンライン資格確認を始めることが可能です。オンライン請求回線環境を導入した費用は、医療情報化支援基金の補助金対象となります。

Q6. マイナンバーカードの裏面を見られたら他人に悪用されないでしょうか。
A6. マイナンバーカードを他人に見られたとしても、他人が患者さんになりすまして手続きを行うことは不可能です。マイナンバー利用する手続きでは、顔写真付きの本人確認書類が必要なため、悪用は困難でしょう。

Q7. マイナンバーのICチップ部分には、プライバシー性の高い情報が記録されていますか。
A7.  ICチップ部分には、税や年金などのプライバシー性の高い情報は記録されていません。特定健診結果や薬剤情報がICチップに記録されることはありません。

オンライン資格確認の補助金に関するQ&A

Q1. 補助金交付の申請はいつまでに行う必要がありますか。
A1. 補助金交付のための申請は、2023年3月31日までに補助対象事業を完了させ、2023年6月30日までに申請する必要があります。事前申請ではなく、精算払いとなります。

Q2. 現物提供の対象台数を超える顔認証付きカードリーダーを購入した場合は、補助金の交付対象となりますか。
A2. 現物提供の対象台数を超えた分は、実施要領第2の1(2)に該当し、50%または75%の補助率による補助の対象になります。オンライン資格確認関係補助適否一覧を参照することをおすすめします。
参考:01_医療機関向け実施要領 (再々最終版)|医療機関等向けポータルサイト

Q3. 顔認証付きカードリーダーを導入せずに、汎用カードリーダーを購入し、オンライン資格確認のためのシステム改修をした場合は、補助金の対象となりますか。
A3. 対象となりません。顔認証付きカードリーダーを導入しない場合は、オンライン資格確認のシステム改修に要する費用などを含め、すべて補助金の対象外となります。

Q4. システム改修後の業者からの実施指導は、補助金の対象となりますか。
A4. 業者からの実施指導も補助金の対象となります。たとえば、2021年10月から開始される薬剤情報の閲覧に必要な実地指導に必要な費用も補助金対象となります。補助金申請時に、領収書、領収書内訳書の添付をして、システム改修経費と併せて申請できます。

Q5. 設置が遅れて5月31日までに導入や6月末までに申請できなかった場合、補助金はどうなりますか。
A5. 3月末までに顔認証付きカードリーダーを申し込みした医療機関は、導入時期が4月以降になったとしても42.9万円を上限に全額補助金対象となります。

まとめ

この記事では、病院・クリニック・歯科医院などの医療機関や薬局に向けて、オンライン資格確認の導入と補助金について徹底解説してきました。

オンライン資格確認を導入すれば、病院の医師やスタッフは、患者さんの保険資格情報を確認できます。このことは、レセプト返戻の作業削減保険証入力の手間の削減、また患者さんの薬剤情報や特定健診情報の入手による安心な医療の提供につながります。

オンライン資格確認導入には、一定の費用負担が必要ですが、初期費用については政府からの補助金を利用することが可能です。補助金を受け取るには、期限までに必要な手続きをする必要があるため、事前によく確認して準備や手続きを行いましょう。

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Y・NISHINA

執筆者

Y・NISHINA

株式会社ITreat

Webディレクター/サブリーダー

化粧品販売、制作会社、建設会社を経て2020年に株式会社ITreatへ入社。未経験からWebディレクターへ転身。現在は、病院・クリニックや一般企業のサイト制作におけるディレクション業務をはじめ、クライアントの採用業務のサポートなどを担当。

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