病院・クリニックの福利厚生には何が求められる?事例とあわせて紹介

採用/求人/キャリアアップ

最終更新日:2024/04/26

公開日:2023/01/25

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病院やクリニックなどの医療施設において、開業や経営の課題は医師や看護師、医療事務といった人材の確保と定着です。これらの課題を解決するには、福利厚生の充実は欠かせません。

この記事では、福利厚生が重要な理由と人気のある制度についてアンケートをもとに徹底解説していきます。病院やクリニックなどの医療施設において、院長先生や人事、総務など福利厚生を担当している部署の方は、ぜひ参考にしてください。

福利厚生が重要な理由

福利厚生とは何でしょうか。福利厚生とは、一般的に「雇用主が従業員およびその家族の健康や生活の福祉を向上させるために導入する諸施策」と定義されています。たとえば、雇用保険や労災保険のような各種保険もあれば、従業員の働きやすい環境を作る目的で用意されるものもあります。では、福利厚生が重要なのはなぜでしょうか。

福利厚生が重要な理由の一つに、日本の雇用制度や環境の変化が関係しています。高度経済成長期とその後のバブル経済期での雇用制度や環境は、終身雇用が一般的でした。しかし今では、開業や経営での課題は人材の確保と定着にあります。雇用主は、従業員から自院や自社を選んでもらうための対策が求められています。そのために、福利厚生は重要です。福利厚生が充実していると、従業員は家族の健康や生活の福祉を考えながら仕事ができ、職場に定着する可能性も大きくなります。
以上のことから、福利厚生は、従業員側から自院や自社を選び、長く勤務してもらうために、とても重要であるといえます。

福利厚生の目的とトレンド

福利厚生の目的は何でしょうか。福利厚生の「福利」とは、従業員の幸福が利益につながるといった意味です。福利厚生の「厚生」は、健康と経済の両面で満たされているとの意味があります。つまり、福利厚生の目的とは、従業員が得ている幸福によって自院や自社に利益をもたらし、双方が安定した豊かな環境を手に入れることです。福利厚生によって、従業員に安定した豊かな生活環境を提供する必要があります。

最近の福利厚生のトレンドは、人材確保、人材の定着を目的としたものが増えています。たとえば、従業員の仕事とプライベートの両立を支援するためのものや、従業員とその家族の健康や将来の人生プランづくりの支援を目的にしたものです。また、職種に関係なく働き方改革を念頭においた従業員の生産性向上や、非正社員待遇改善を目的としたものを充実させる傾向があります。

福利厚生の種類

福利厚生は、大きく分けて2種類あります。社会保険加入をはじめ法律で定められた「法定福利厚生」と、住宅補助など経営者側が任意で定める「法定外福利厚生」です。

「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」とは、どのような制度でしょうか。

「法定福利厚生」とは

「法定福利厚生」とは、雇用主が費用を負担して従業員に支払わなければならない保険のことです。たとえば、雇用保険、国民健康保険、介護保険、労災保険、国民年金保険、子ども・子育て拠出金などが法定福利厚生にあたります。「法定」と呼ばれることから、法定福利厚生は、法律で定められています。

「法定外福利厚生」とは

「法定外福利厚生」とは、法律では定められておらず、雇用主が導入するかどうかを判断する保険のことです。たとえば、住宅手当、交通費、人間ドックの受診料、退職金、企業型確定拠出年金などが法定外福利厚生にあたります。スポーツクラブの利用割引など、独自の制度を導入している病院や企業もあります。

病院・クリニックの社会保険と一般企業の社会保険との違い

病院やクリニックの社会保険と一般企業の社会保険は、一部が異なる場合があります。

医療法人化している病院やクリニックは、健康保険および厚生年金保険への加入が法律で定められています。医療法人化していない病院やクリニックであっても、常時5人以上のスタッフを雇用している場合、社会保険への加入が必須です。スタッフが常時5人以下の場合、国民健康保険(医師国保など)や国民年金への加入になるケースがほとんどですが、スタッフの同意があるならば社会保険への加入も可能です。

スタッフを雇用することでかかる社会保険料は、病院やクリニックにとって大きな負担となります。そのような理由で、多くの個人経営の病院やクリニックは社会保険には未加入のようです。

求職者からニーズのある「法定外福利厚生」

「法定外福利厚生」には、いろいろな種類があります。求職者からニーズのある「法定外福利厚生」には、どのような種類があるのでしょうか。いくつか見ていきましょう。

人気のある福利厚生・制度

人気のある福利厚生制度について解説します。医療業界の福利厚生・制度に対する意識調査によると、従業員に人気のある福利厚生は、「住宅手当・家賃補助」です。次いで、「休暇関連」の福利厚生、「家族手当」が上位を占めています。

共働きの家族のための「保育施設」に関した福利厚生や、従業員のニーズに合わせた「カフェテリアプラン」などを導入する企業が増えています。しかし、使い方を十分に検討できていないためか、従業員の満足度は伸びていません。また、「余暇施設、宿泊施設、レジャー施設などの割引制度」などに対する従業員の満足度も伸びていません。

しかし「資格取得手当」は、従業員の間で徐々に人気が高まっています。従業員の、個人の努力や才能をしっかりと評価してもらいたいとの思いが伝わってきます。

▼出典:医療業界の福利厚生・制度に対する意識調査|日経メディカルプロキャリア
https://nmproc.nikkeihr.co.jp/contents/column/survey/003/report01.html

住宅関連

「住宅関連」の福利厚生は、従業員の間で最も人気のある保険制度です。住宅手当や家賃補助は、従業員にとって大きなメリットがあるでしょう。家賃は、従業員の生活費の大半を占めています。家賃の半額負担や独身寮制度の導入は、従業員の生活にゆとりを与える結果になります。住宅関連の福利厚生を導入することで、人材の確保および定着につながるでしょう。

休暇関連

「休暇関連」の福利厚生は、従業員に人気のある福利厚生の一つです。法律で義務化されている法定休暇とは異なり、福利厚生によって導入される特別休暇は法律に定めがないため、病院やクリニックが自由に条件などを決められます。特別休暇の中には、リフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇、バースデー休暇などがあります。従業員にとってうれしい制度ですし、上手く導入できれば病院側にもメリットがある福利厚生制度です。

家族手当

「家族手当」とは、家族を扶養している従業員に賃金とは別に支給される手当のことです。家族手当は、人気のある福利厚生の一つで、病院やクリニックによって支給条件や対象者、人数、支給額が異なります。配偶者や子どもが主な対象です。

学会・研修補助

「学会・研修補助」の福利厚生制度も、従業員にとって魅力的な制度の一つです。近年、キャリアアップやスキルアップのために学会や研修に参加する従業員が多くいます。病院側としてもスタッフの知識や技術の向上のために、学会・研修補助を導入することはメリットとなります。導入すれば、スタッフの人材確保と定着につながるでしょう。

医療費補助

「医療費補助」のような、病院のスタッフの健康にアプローチする福利厚生は人気の制度の一つです。勤務先の病院やクリニックを受診すれば、医療費の一部を還元する、といったような運用をしているようです。医療費の節約は、従業員や家族の安心につながります。小さい子どもがいる従業員にとっても魅力的な制度でしょう。

人間ドック費用補助

医療費補助のほかに「人間ドック費用補助」も、人気のある福利厚生の一つです。日帰りや宿泊して身体の隅々まで検査してもらえる人間ドックですが、高額の費用がかかります。数万円の費用がかかる人間ドックの費用の一部を負担してもらえる福利厚生制度の導入があるなら、従業員にとって大きな魅力です。

スポーツ・アミューズメント関連

「スポーツ・アミューズメント関連」の福利厚生を導入する施設も増えてきています。健康維持のためにも適度な運動は大切ですが、多忙な日々を送っているスタッフは続ける事が難しいでしょう。そこで、スポーツ・アミューズメント施設の利用にかかる費用の一部を病院やクリニックが負担してくれるなら従業員にとって魅力的です。スポーツジムなどに格安で入会できるなら、スタッフの運動不足解消やストレス軽減につながり、病院側も益を受けるでしょう。

食堂・食事補助

また「食堂・食事補助」に関係した福利厚生もよくみられます。従業員の昼食代などの飲食費を病院側が負担してくれれば、スタッフは生活費にゆとりを持てます。多くのスタッフが働くような病院では、従業員が利用できる食堂が完備されています。また個人医院であっても、配送サービスを利用してお弁当やお惣菜を提供するなどの方法もあります。大きな負担となる毎日の食事代を軽くすることで、スタッフの経済的支援ができます。

財形貯蓄制度

日本人のマネーリテラシーの向上とともに、「財形貯蓄制度」を導入する病院やクリニックも増えています。財形貯蓄制度とは、毎月の給与から一定金額が自動的に天引きされて積み立てられる制度で、確実に貯金ができるメリットがあります。従業員が、退職後に安定した生活を送るために、また財産形成のために行う貯蓄を病院が促して援助する目的があります。財形貯蓄制度を導入すれば、スタッフは定年まで勤務しようと考えるようになり、従業員の定着につながります。また、貯蓄制度があればスタッフの老後における大きな助けとなるため、従業員の確保にもつながるでしょう。金銭面での不安が少しでも緩和されることは、従業員にとって魅力的です。

短時間勤務

育児や介護などの家庭の事情で、病院やクリニックの一般的な雇用条件である週5日・8時間勤務が難しい場合もあります。「短時間勤務」が導入されていれば、必然的に求職者にとって魅力的な選択肢の一つになるため、病院側にとっても大きなメリットです。自分のライフスタイルを優先して働けることは、従業員にとって大きな魅力でしょう。

保育施設

育児中の従業員にとって人気なのが「保育施設」に関係した福利厚生制度です。保育施設の利用料が補助されるなら、育児中のスタッフにとって大きなメリットとなります。最近では、院内に保育施設を設ける病院も増えています。院内に設けられていない病院でも、病院周辺の保育施設の利用料を補助することは、従業員にとって魅力です。育児と仕事を両立させたいと考えている求職者も増えているため、保育施設に関係した福利厚生を検討することは重要です。

退職金

「退職金」制度があれば、従業員は職能と職歴に応じた金額を貰うことが可能です。退職金は老後の強い味方となるため、退職金制度のある病院やクリニックを選ぶ求職者は増えています。「老後は2,000万円必要」と言われる時代だからこそ、退職金の福利厚生を導入することはメリットとなります。退職金制度があれば、従業員は退職まで働こうと思い、従業員の定着につながるでしょう。

福利厚生を導入して病院・クリニック側が得られるメリットは?

福利厚生を導入することは、病院やクリニックにとって多くのメリットがあります。具体的に、どのようなメリットがあるのか見てみましょう。

応募数アップと退職率の低減

現在、病院やクリニック側に求められている課題の一つに「求める人材の確保」があります。病院やクリニックが求職者のライフスタイルに合った福利厚生を導入することで、自院に魅力を感じてもらえれば、医師や看護師・医療事務などより多くの人材が集まりやすくなります。病院やクリニックの採用力が向上するでしょう。

生産性の向上

病院やクリニックが福利厚生を導入するメリットに「生産性の向上」があります。福利厚生の充実は、従業員の満足度アップや従業員のストレスフリーにつながります。その結果、生産性の向上といったメリットを病院やクリニック側は得られるでしょう。

社会的信頼性の向上

福利厚生を導入することで病院やクリニックが得られるメリットの一つは、「社会的信頼性の向上」です。福利厚生の充実は、従業員のモチベーションの向上や笑顔につながり、その仕事ぶりや笑顔を見た患者さんからの病院やクリニックに対しての評価は向上します。患者さんからいただく高評価の口コミは、病院やクリニックの集客(集患・増患)に大きな影響を与えます。

節税効果

福利厚生を導入することで得られるメリットに「節税効果」があります。福利厚生にかかった費用が条件を満たしており、「福利厚生費」と認められれば、経費として計上することが可能です。そうなれば、法人税の算出根拠となる利益を下げられるため、法人の病院やクリニックは法人税を下げることができます。

実務でよく出てくる福利厚生費の事例と要件

条件を満たし「福利厚生費」と認められれば、病院やクリニックは大きなメリットを得ることが可能です。実務でよく出てくる福利厚生費の事例と、その要件についてご紹介します。

実務でよく出てくる福利厚生費の事例には以下の4つがあります。

  • 社員旅行
  • 従業員への食事支給
  • 従業員との飲食代
  • 従業員の無料診療

それぞれの事例の福利厚生費となる要件について見てみましょう。

社員旅行が福利厚生費となる要件

社員旅行が福利厚生費となるための要件は、次の事柄が挙げられます。

  • すべての従業員を対象としており、従業員の参加率が50%以上あること
  • 社員旅行の旅行期間が4泊5日以内であること
  • 社員旅行不参加の従業員に対して現金支給が行われないこと

以上の条件を満たしていれば、福利厚生費として認められます。もし、社員旅行に不参加の従業員に対して現金支給が行われた場合、福利厚生費として認められません。現金支給を受けた従業員のみならず、社員旅行に参加したすべての従業員に対しても会社負担の旅行費用が給与として扱われるため注意が必要です。

従業員への食事支給が福利厚生費となる要件

従業員への食事支給は、社員食堂、仕出し弁当などのかたちで扱われます。従業員への食事支給が福利厚生費と認められるには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 食事代金の半分以上を従業員が負担すること
  • 病院側が負担する従業員一人当たりの食事代が月3,500円(税抜き)以下であること
  • 残業や当直勤務者に対する食事の現物支給がなされること

以上に挙げられた条件をすべて満たしていれば、福利厚生費として認められます。しかし、食事手当として現金が従業員に支給される場合は福利厚生費としては認められず給与扱いとなるため注意が必要です。ただし、深夜勤務者(当直勤務者)に対しては、1食あたり300円以下の現金支給が認められています。その場合は給与扱いとはならず、福利厚生費になります。

従業員との飲食代が福利厚生費となる要件

従業員との飲食代が福利厚生費として認められるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

  • 全従業員が対象で、全従業員の50%以上が参加していること
  • 病院またはクリニックの費用負担が一律であること
  • 病院またはクリニックが負担する金額が社会通念上に考えて一般的な額であること

病院やクリニックにとって従業員との飲食はよくあるケースです。福利厚生費として認められるには上記の条件に加えて、飲食会の開催頻度も判断基準となります。高級レストランなどでのごく一部の従業員との会食は、社会通念上に考えて福利厚生費としては認められない場合があるため注意が必要です。

従業員の無料診療

従業員の無料診療が福利厚生費として認められるには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 従業員が全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していること
  • 病院またはクリニックが負担する診療費が社会通念上適正とされること

以上の条件をすべて満たしていれば、福利厚生費として認められます。従業員の無料診療で受け取った診療費は、給与支給時に返金されます。また、社会保険では通常通り点数計算して、診療報酬を請求することが可能です。

まとめ

この記事では、福利厚生が重要な理由と人気のある制度についてアンケートをもとに徹底解説してきました。

保険料負担を考えると、福利厚生の導入について二の足を踏んでしまう病院やクリニックもあることでしょう。しかし、生産性の向上や社会的信頼性の向上に目を向け長期的に考えるならば、自院にとって大きなメリットがあります。

福利厚生を上手に利用すれば、従業員のモチベーション維持につながります。また福利厚生制度の導入で、他の病院やクリニックとの差別化を図ることができ、人材の確保・維持にもなるでしょう。たしかに、福利厚生にともなう保険料負担の分は経費が増しますが、そのコストは自院が必要としている質の高い人材確保のためと考えましょう。さらには優秀なスタッフが自院において、これからも力を発揮し続けるための給与以外の特別報酬でもあります。

病院やクリニックで院長先生や人事、総務など福利厚生を担当している部署の方は、福利厚生を上手く活用し人材の確保・維持につなげてください。

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執筆者

D・MIZUNAGA

株式会社ITreat

執行役員・Webディレクター

大手人材系企業で医療業界のキャリアコンサルタントとして勤務したのち、ITベンチャーへ転身。現在は株式会社ITreatの執行役員として、主に病院やクリニックのWebサイト制作、採用課題の解決、SEOコンサルティングを行う。キャッチコピーは「関わるすべての方とのWin-Winを作る」。

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