歯科衛生士がすぐ辞めるのはなぜ?医院でできる離職防止策を解説

人材育成/スキルアップ

最終更新日:2024/04/26

公開日:2024/04/11

歯科衛生士がすぐ辞めるのはなぜ
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近年、歯科業界では歯科衛生士の必要性が高まっています。歯科衛生士の有効求人倍率は高く、需要に供給が追いついていない状況です。そのような状況では、歯科衛生士の採用活動だけでなく、今いる人材を離職させない工夫も重要でしょう。

この記事では、歯科衛生士がすぐに辞めてしまう理由や離職防止対策についてご紹介します。歯科衛生士の離職に悩んでいる院長先生は、ぜひ参考にしてください。

歯科衛生士の離職率とその理由

歯科衛生士として働いている人のうち、どれくらいの割合の人が転職や離職しているのでしょうか。また、転職や離職の理由には、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、歯科衛生士の離職率と離職や退職の理由についてご紹介します。

現職からの転職を考えている衛生士は17.2%

歯科衛生士の資格を持っている人のうち、どれくらいの人が転職を考えているのでしょうか?

日本歯科衛生学会が。令和元年におこなった「勤務実態調査報告書」によると、転職または現在の勤務先を替えたいと考えたことの有無について、下記のような結果になりました。

  • 現在考えている:17.2%
  • 考えたことがある:45.9%
  • 考えたことがない:35.3%

つまり、就業している歯科衛生士の6人に1人程度にあたる衛生士が「今現在転職したい」と考えている計算になります。
また、現在転職を検討している衛生士は20代〜30代前半に多く、20%以上にものぼります。

歯科衛生士が業界全体で不足している状況から、転職市場において売り手市場(就職したい人材の数より採用したい歯科が多い状態のこと)であることが一つの要因であると考えられます。令和4年度における、新卒歯科衛生士の有効求人倍率が、過去最高の23.3倍であったことからも、若い衛生士であるほど、容易に転職できる環境にあることが見て取れます。

参考:公益社団法人日本歯科衛生士会:歯科衛生士の勤務実態調査報告書
参考:一般財団法人 口腔保健協会:歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告

歯科衛生士の転職・退職理由トップ5

歯科衛生士の転職・退職理由をご紹介します。

歯科衛生士の主な転職・退職理由
  • 結婚・出産・育児などのライフイベント
  • 不十分な研修・教育体制
  • 職場での人間関係
  • 給与・待遇への不満
  • 業務内容への不満
  • 勤務時間や勤務形態への不満

歯科衛生士の多くは女性のため、最も多かった転職・退職の理由が「結婚・出産・育児などのライフイベント」であることには納得できます。
20代から30代にかけて結婚や出産などで一時離職してから、40代以降に非常勤として復帰する傾向にあるようです。

また、転職や退職の大きな理由は「職場での人間関係」です。歯科医院の従業員数は一般的に少人数であるため、職場内での軋轢が生じやすい傾向があります。
同僚や先輩スタッフとの人間関係が問題となることが多いですが、経営者である院長先生との問題も生じやすいようです。一般的な指示でもによりストレスを抱えることがあります。

経験のある歯科衛生士が入職したとしても、入職したその日から活躍できるケースは多くないでしょう。
それは、歯科医院ごとに診療メニューが違い、院長先生の治療方針が違い、機材や薬品が違い、チェアが違い、患者さんへの接客ルールが違うからです。
つまり、新しいスタッフへの教育やフォローアップ体制が不十分であると、「わからないのに教えてもらえない」→「教えてもらっていないのに怒られた」→「他の歯科医院を検討してみようかな」と、早期離職の原因になるのです。
また、早期離職につながった際に、正直にその理由を話してくれないケースが多いため、経営者側としては、自院の教育体制の不十分さに気づかないのです。

給与・待遇への不満も転職や退職の理由の一つです。歯科衛生士は国家資格職であるものの、看護師や理学療法士といった他の国家資格と比較すると給与水準は低めであるため、他業種へのキャリアチェンジをすることも少なくありません。

業務内容に不満があることも離職や転職につながります。たとえば、歯科衛生士の業務は「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」と分かれていますが、現状ではこれらの業務以外の仕事にも従事することがあるようです。本来の仕事に集中して取り組めないことが原因でストレスを抱え、悩んで離職や転職を考える歯科衛生士は少なくありません。

また、休憩時間が短かったり、残業があったりすることに不満を感じ、離職や転職していく歯科衛生士もいます。歯科医院は、医院に来た患者さんに治療を行うその事業形態がいわゆる「店舗型ビジネス」です。土曜日や17時以降などの、オフィスワーカーがオフになる時間帯に逆に忙しくなるため。就業時間帯について、不満が出やすい状況といえます。

参考:公益社団法人日本歯科衛生士会:歯科衛生士の勤務実態調査報告書

歯科衛生士の早期離職によるデメリット

デメリット①:採用や教育の時間が無駄になる

国家資格を持った歯科衛生士スタッフといえど、中途で入社したスタッフに対してはそれなりに教育や研修の時間が必要になります。
特に小さな事業所の場合はそれが顕著です。教育をするために、すでに戦力になっている別の衛生士が時間をとられてしまい、あるていど診療を犠牲にしてしまうケースもあります。
ある程度、業務マニュアルを整備している医院も見られますが、実際の施術や患者さんに対する接遇面は、文面だけでは伝わらないケースも多く、実際のところ院長先生やスタッフの手がかかってしまう状況になります。
もし、早期で離職することになると、これらの教育に費やした時間が水の泡となってしまうのです。

デメリット②:費用面でのデメリット

早期離職は、お財布にも影響を与えます。
まずは、採用にかかる費用です。近年は一人の歯科衛生士を獲得するために、全く費用をかけない、といったことは少なくなっているように思います。地元の求人誌や大手の求人媒体に掲載するための費用は、10万円以上になることが多いです。
また、成功報酬型の人材紹介業者を利用すると、一人当たり80万〜120万程度の紹介手数料を支払うことになります。早期離職による返金制度も用意されていますが、全額が戻るとは限らないので契約書をしっかりと確認することをお勧めします。

デメリット③:他のスタッフへの悪影響

入職したスタッフがすぐに辞めてしまうことは、既存のスタッフにも影響を与えます。
せっかく増員できたのにすぐに退職してしまうと、欠員が出たまま診療を回すことになって、業務負担が増えてしまいます。
すぐに穴を埋める人材を獲得できればよいのですが、多くの場合は採用活動を始めてから、新しいスタッフの入職までに1ヵ月程度はかかってしまうでしょう。
連鎖的な退職につながってしまわないよう、細心の注意が必要です。

歯科衛生士の離職防止対策

歯科衛生士がすぐに辞めてしまうことを避けるために何ができるでしょうか。
歯科衛生士の主な離職防止策を4つご紹介します。

歯科衛生士の離職防止策
  • 院内教育ツールの導入
  • 適正な評価システムの構築
  • 福利厚生制度の充実
  • スタッフとの関係値の構築(1on1の実施)

院内教育ツールの導入

まず一つ目に挙げられる歯科衛生士の離職防止対策には「院内教育ツールの導入」があります。
スタッフが手厚い教育・研修を求めるのは、どの業種にも当てはまることです。しかし、歯科衛生士の場合それがより顕著であると言えます。それは、ミスのできない医療職であるということ、施術や手技は、紙のマニュアルを読んでもすぐには理解できないということ、わからないことがあっても患者さんの前では聞きづらいということが主な要因です。

最近では動画で院内のマニュアルを共有できるツールの活用が広まっています。
これが、歯科衛生士との業務内容と役割にとてもマッチしており、多くの先生が導入しています。動画マニュアルでは、業務をわかりやすく視覚的に伝えられるため、通常のテキストや写真だけの紙ベースのマニュアルよりも理解しやすいことが特徴です。新たなスタッフが加入したり、スタッフの配置換えをしたり、分院展開する場合などにも何度も同じ説明をしなくて済みます。

スタッフの適正な評価

歯科衛生士に「自分が適正に評価されていない」と感じられることは、退職のリスクになります。経営者の裁量で、昇給や賞与を決定するのではなく、明確な人事評価制度を構築し、ある程度客観的な指標をもとに評価を行うことが重要だと言えます。

福利厚生制度の充実

福利厚生制度が充実している医院には、なかなか離職されないという利点があります。転職してしまうと、その恩恵が受けられなくなるからです。特に家庭との両立に関係するような福利厚生制度を作り、その内容を広く公開することは、採用にも良い影響をもたらします。

病院・クリニックの福利厚生には何が求められる?事例とあわせて紹介
福利厚生が重要な理由 福利厚生とは何でしょうか。福利厚生とは、一般的に「雇用主が従業員およびその家族の健康や生活の福祉を向上させるために導入する諸施策」と定義されています。たとえば、雇用保険や労災保険

スタッフとの関係値の構築(1on1の実施)

「スタッフとの関係値を構築」することも、歯科衛生士の離職防止対策の一つです。スタッフの心のなかに芽生えた、悩みや不満を早いうちにキャッチアップして対策することで、防げる退職があります。

特に入職してすぐのタイミングは、精神的にも不安定です。入職後3日目、1週間後、1ヶ月後などのタイミングで15分程度の1on1ミーティングの場を設けると良いでしょう。

まとめ:歯科衛生士がすぐ辞めないよう、できる対策があります

特に歯科衛生士は、売り手市場という要因もあり、早いタイミングで転職という選択肢を考えやすいです。

しかし、経営者側でそれらに対して適切に対策を行うことで、離職を防ぐことができます。動画マニュアルの導入により業務上の作業手順や接客方法を分かりやすく伝えたり、定期的な1on1ミーティングを行うなどして職場環境の整備を行いましょう。

株式会社ITreat(アイトリート)は、医療業界に特化したスタッフが、貴院の課題解決をお手伝いします。また、動画マニュアルに関するツールの導入についての相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

M.TSUCHIYA

執筆者

M.TSUCHIYA

株式会社ITreat

Webディレクター

東京都内の大型歯科医院にて、歯科助手・TC Masterとして従業員の育成や新規医院の立ち上げなどに携わる。2023年に株式会社ITreatに入社し、Webディレクターにキャリアチェンジ。「歯科医院の現場をよく知るWebディレクター」として、医療現場の課題をWebサイトを通して解決する提案を行っている。

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